『マスタード』と『からし』の違い
スーパーの調味料コーナーで見かける「マスタード」と「からし」。
一見すると同じような調味料に思えますが、その原料、製法、そして味わいは大きく異なります。
今回はマスタードとからしの違いを深く掘り下げ、それぞれの魅力と特徴、そして料理との組み合わせについて詳しく解説していきます。

原料の違い:異なる品種のからし菜の種
マスタードとからし、どちらもアブラナ科の植物の種子から作られます。しかし使用される品種が異なるのです。
- マスタード
マスタードは、アブラナ科の植物であるマスタードの種を原料とします。イエローマスタード、ブラウンマスタード、ディジョンマスタードなど、様々な品種があります。
辛味が比較的マイルドで、様々な料理に合わせやすいのが特徴です。 - からし
からしは、アブラナ科の植物であるカラシナの種を原料とします。和がらし、西洋からしなど、品種によって辛みや風味が異なります。
辛味が強く、鼻にツンとくる刺激が特徴です。
製法の違い:調味料の有無と粒度
製法においても、マスタードとからしには大きな違いが見られます。
- マスタード
種子に酢、砂糖、ワインなどの調味料を加えて作られます。これらの調味料によって辛味が抑えられ、風味豊かな味わいが生まれます。
また、種子をすり潰すものから粒を残すものまで、様々なタイプがあります。 - からし
基本的には種子のみを使用し、水を加えて練り上げるか粉末状に加工されます。
調味料はほとんど加えられないため、原料の辛味がダイレクトに感じられます。
味の違い:辛味、風味、そして使い分け
原料と製法の違いから、マスタードとからしでは味わいが大きく異なります。
- マスタード
辛味がマイルドで、酸味や甘みも感じられます。粒によって食感も異なり、粒マスタードは粒のプチプチとした食感が楽しめます。 - からし
辛味が強く、鼻にツンとくる刺激があります。風味はシンプルで、素材の味を引き立てます。
では、それぞれの調味料がどのような料理に合うのでしょうか。
- マスタード
ハンバーガー、ホットドッグ、肉料理、魚料理など、幅広い料理に活用できます。
粒マスタードはステーキやグリル料理のソースに、ディジョンマスタードは肉料理やチーズとの相性が抜群です。 - からし
和食には欠かせない調味料で、蕎麦、うどん、天ぷら、焼き肉など、様々な料理に使われます。また、カレー粉の原料としても使用されます。
種類の違い
マスタードとからしは、それぞれ様々な種類があります。
〜マスタードの種類〜
- イエローマスタード
アメリカで最も一般的なマスタードで、粒子が細かく滑らかです。辛さは控えめで、マイルドな味わいです。 - ディジョンマスタード
フランスのディジョン地方で作られるマスタードで、粒感が残っているのが特徴です。酸味が強く、風味豊かです。 - ブラウンマスタード
黒色のマスタードシードを使用し、深いコクと香ばしさが特徴です。バーベキューソースやマリネに最適です。 - ホールグレインマスタード
種子を粗く砕いた粒感が残るマスタードです。食感を楽しみたいときに最適です。 - ホースラディッシュ
根菜のホースラディッシュをすりおろして作られたもので、マスタードの一種として扱われることもあります。鼻にツンとくる刺激が非常に強く、肉料理のアクセントに最適です。
〜からしの種類〜
- 練りからし
粉末状のからしを水や酢で練り上げたもので、チューブに入っているものが一般的です。 - 粉からし
粉末状のからしで、自分で水を加えて練って使用します。 - 本からし
本来のからしの風味を味わえる、無添加のからしです。
歴史と文化
- マスタード
マスタードの歴史は古く、古代エジプトやローマ時代から食されていた記録が残っています。当時は、主に薬として用いられており、消化促進や鎮痛効果があると信じられていました。
ヨーロッパでは中世以降、調味料として広く普及し、様々な料理に用いられるようになりました。 - からし
からしの歴史もまた古く、日本には室町時代に中国から伝わったと言われています。
当初は薬として用いられていましたが、江戸時代には寿司や蕎麦などの料理に添えられるようになり、庶民の食生活に深く根付いていきました。
また、当時は大根おろしにからしを混ぜて食べたり、醤油と混ぜて刺身のツマとして食べることも一般的でした。
『マスタード』と『からし』の共通点
マスタードとからし。一見すると同じような調味料として捉えられがちですが、その歴史、原料、製造方法、そして風味に至るまで、様々な違いが存在しました。
しかし、一方で両者には共通する点も数多く見られます。

歴史的な共通点:人類と香辛料の長い物語
マスタードとからしの歴史を紐解くと、人類が香辛料を求めたという共通の原点が見えてきます。
- 古代からの利用
マスタードの種は、古代エジプトやローマ時代から食料の保存や風味付けに使われていました。
一方、からしも日本においては古くから食文化に根付いており、様々な料理に用いられてきました。 - 宗教と香辛料
中世ヨーロッパでは、マスタードは宗教的な意味合いを持つこともありました。例えば、復活祭の際に食されることが多かったようです。
からしも、仏教や神道など日本の宗教的な儀式において用いられることがありました。 - 交易と文化交流
マスタードは、ヨーロッパから世界各地に広がり、各地域の食文化に影響を与えました。
からしも、シルクロードを通って中国から日本に伝来し、日本の食文化を豊かにしました。
原材料の共通点:辛みの源は種子
マスタードとからし、両者の辛みの源は、いずれも植物の種子です。
- アブラナ科の植物
マスタードはアブラナ科の植物であるマスタードプラントの種子、からしは同じくアブラナ科の植物である和がらしの種子が主な原料です。 - 辛み成分
両者の種子には、シニグリンという配糖体が含まれており、この配糖体が酵素と反応することで辛み成分のイソチオシアネートを生み出します。
風味の共通点:辛みと複雑な香り
マスタードとからしは、いずれも辛みが特徴的な調味料ですが、その風味は実に奥深く複雑です。
- 辛みの種類
両者の辛みは、熱を加えることで変化します。マスタードは熱を加えると甘みが増す傾向がありますが、からしは辛みが強くなる傾向があります。 - 複雑な香り
辛みだけでなく、酸味、苦味、甘み、そして独特の香りが複合的に感じられます。これらの風味は、原材料の種類や製造方法によって大きく異なります。 - 複合的な調味料との相性
マスタードもからしも、他の調味料との組み合わせによって、無限の味の可能性を生み出します。
健康効果の共通点:抗酸化作用など
マスタードとからしには、様々な健康効果が期待されています。
- 抗酸化作用
シニグリンには、強い抗酸化作用があると考えられています。 - 消化促進
食欲を増進し、消化を促進する効果も期待できます。 - 殺菌作用
一部の品種には、殺菌作用があると言われています。
『マスタード』と『からし』の違い・共通点まとめ
マスタードとからしは、どちらも辛味のある調味料ですが、原料、製造方法、味、歴史、そして料理への使い方が大きく異なります。
マスタードは、アブラナ科の植物であるマスタードの種を原料とし、辛味が比較的マイルドで様々な料理に合わせやすいのが特徴です。
からしは、アブラナ科の植物であるカラシナの種を原料とし、辛味が強く、鼻にツンとくる刺激が特徴です。
しかしマスタードとからし、両者の辛みの源は、いずれもアブラナ科の植物の種子です。
それぞれの調味料の特徴を理解し、料理に合わせて使い分けることで、より一層料理の味を引き出すことができます。

マスタードの方が甘いと思っていたのは間違っていなかったか…
コメント